中小企業から大企業への転職は、重要なポイントを押さえて活動すれば不可能ではありません。
まずは現在の職場で専門性を高め、さまざまなプロジェクトにかかわるなど経験を積むことが大切です。
マネジメント経験があると大きな強みとなります。
中小企業から大企業に転職について知りたい!
中小企業に勤めていて、知名度が高く待遇も良い大企業に転職したいと考えている人も多いのではないでしょうか。
とはいえ、大企業は新卒採用がメインのイメージが強く、転職に成功するか不安で一歩踏み出せない人もいるでしょう。
ここでは、中小企業から大企業への転職は可能なのか、成功させるためにはどのような点に注意したほうが良いのかなどについて解説します。
中小企業から大企業への転職は可能なのか?
結論からいうと、中小企業から大企業への転職を成功させることは不可能ではありません。
ここでは、その理由について以下の2点を中心に解説します。
- 大企業への転職のハードルは下がる傾向にある
- 重要なのは企業規模よりもヒューマンスキル
それぞれ見ていきましょう。
大企業への転職のハードルは下がる傾向にある
国内では、運輸やサービス業を中心にさまざまな業界で人手不足が問題となっています。
この現状は、厚生労働省の調査でも明らかです。
さらに、厚労省の別の調査によると、従業員1,000人以上の企業において大卒社員の24.2%、高卒社員の25.3%が入社3年以内に離職していることが明らかになっています。
このような背景から、大手・中小問わず中途採用を実施する企業が増えているのです。
そのため、大企業への転職ハードルも下がる傾向にあります。
重要なのは企業規模よりもヒューマンスキル
中途採用の選考において重視されるのは、個人の実績やこれまでの経歴、スキルなどです。
そこに加え、仕事への意欲や既存社員とスムーズに連携して仕事ができるコミュニケーション能力があるか、人柄に問題はないかなどが判断の基準となります。
前職の会社の規模は、基本的にほとんど選考に関係ないと考えていいでしょう。
むしろ、人的リソースに余裕のない中小企業の社員は広い裁量権を持たされ幅広い業務を担当することが多く、若いうちからマネジメント職につくケースも稀ではありません。
このような経験はむしろ採用に関して大きな強みとなります。
中小企業から大企業への転職を成功させる4つのコツ
大手企業への転職ハードルが下がっているとはいえ、誰でもが容易に採用されるわけではもちろんありません。
ここでは、転職を成功させるために注意したい以下の4つのコツを解説します。
- 企業の求める専門スキルをアピールする
- 大量採用の大手を狙う
- 中小企業で幅広い職務・プロジェクトを経験しておく
- 中小企業でマネジメント職を経験しておく
それぞれ詳しく見ていきましょう。
企業の求める専門スキルをアピールする
大企業は、新規プロジェクトの立ち上げの際に中途採用を実施することが多いです。
たとえば、ホンダは自動車だけではなく小型ビジネスジェット機の開発をスタートさせ、ダイハツ工業は通所介護施設向けに送迎サービス事業を開始し、どちらも一定の成果を上げています。
また、政府がキャッシュレス決済普及を推進していることから、多くの企業が電子決済事業に乗り出し、さまざまな「○○ペイ」サービスを始めたのは記憶に新しいのではないでしょうか。
このような新規プロジェクトの立ち上げ時、成功のために不可欠なのが、その分野に必要な高度なスキル、専門性を持った人材です。
自社にそのような人材がいなければ外部から募集しますので、求める専門スキルがあり、的確にアピールできれば採用の際に大きな武器となります。
日ごろから志望する企業がどんな人材を求めているかをチェックしておき、必要なスキルを磨くと良いでしょう。
大量採用の大手を狙う
大手企業は新卒採用を大量に行い、時間をかけて育成することが一般的です。
とはいえ、実は営業や製薬会社のMRなどは中途で大量採用することも稀ではありません。
新規事業立ち上げの際には、必要な人材を一気に大量に採用することもあるでしょう。
そのようなチャンスを狙うのも1つの方法です。
中小企業で幅広い職務・プロジェクトを経験しておく
同じ業界の同じ職種であっても、大企業と中小企業とでは社員が担当する職務の幅には大きな違いがあります。
中小企業は社員の数が多くないため、部門間の垣根も低く、幅広い業務を担当することが一般的です。
一方、大企業ではそれぞれ担当部門が細かくわかれ、職務も限定される傾向があります。
経理を例に挙げると、大企業では出納、主計、財務などと細かく分かれ、その分野の業務だけを行うことが一般的です。
中小企業ではひとりでひととおり担当しなければならず、さらに人事部や総務部の業務を行うことも珍しくありません。
中小企業の方が任される範囲が広く、ビジネスの全体像をつかんで業務を遂行できます。
大企業とは異なり、若いうちから幅広くさまざまな経験を積める点は大きな強みであり、選考にあたっても優れたアピールポイントになります。
中小企業でマネジメント職を経験しておく
大企業は社員数そのものが多いため、なかなか昇進の機会が訪れません。
30代、40代で高い役職についてないことも特に珍しくないでしょう。
一方、中小企業は早いうちから昇進の機会があり、IT系企業やベンチャー企業では20代で幹部職であることも少なくありません。
実は、この「マネジメント経験がある」というのは、大企業への転職において大きな武器となります。
これは、大企業では部下やチームをマネジメントできる管理能力のある人材が少ない傾向が強いためです。
大企業を目指すのであれば、まずは今努めている中小企業で仕事をがんばり、ある程度のポジションまで出世してから転職するほうが、ロングスパンにはなりますが手堅いでしょう。
中小企業から大企業への転職の4つの注意点
大企業に転職できれば、大きなプロジェクトに関われる、満足度の高い仕事ができると考えていませか。
しかし、実際にはそううまく行かないケースも見受けられます。
それは、大企業ならではの以下のようなデメリットがあるからです。
- 仕事の自由度が低い
- 大多数の中に埋もれる
- 保守的な社風・企業文化
- 先進的な考えが否定される
それぞれ見ていきましょう。
仕事の自由度が低い
中小企業では、業務範囲が広く、大きな裁量権を持たされている人も多いでしょう。
しかし、大企業では部門ごとにはっきり独立していることが一般的で、任される仕事の範囲は広くありません。
自分の裁量で動かせる物事が少なく、自由度が高いとは言えないのです。
上司に承認を得なければならないため、中小企業と同じような仕事観では働きづらさを感じるでしょう。
大多数の中に埋もれる
大企業はひとつの部門に大勢の社員がいます。
基本的に難関の採用試験を突破してきた社員ばかりのため、ポテンシャルが高くいわゆる「使える」人材が多いです。
そのようななかでは、一定の成果を上げても特に大きな評価に結びつきません。
結果を出し続けなければ「その他大勢」の一員として埋もれてしまい、良いポストに就くことも難しくなります。
保守的な社風・企業文化
中小企業は経済基盤が盤石でないこともあり、常に新しいことにチャレンジし、スピード感を持って対応していく必要があります。
しかし、大企業は経済的に安定し、すぐにどうこうなる心配がありません。
そのため、既存のやり方や規律を重視する保守的な傾向が強く、ムダな会議や報告書の提出など形式ばかりを重んじて何を決めるのにも時間がかかります。
やりたいことが実現できるからと考えて大企業に転職してみたら、非常に保守的で古い考えにとらわれ何もできない環境だったということもあり得るのです。
先進的な考えが否定される
保守的な風土とも通じますが、大企業の多くは先進的なやり方、考え方を頭から否定する傾向があります。
古く大きいだけに組織そのものが硬直化してしまい、「自分の部門の担当業務だけやっていればいい」とするセクショナリズムが強く、新しい物事に目を向けないのです。
もちろん、大企業のすべてが先進的な考えを否定するところばかりではありませんが、多いことも知っておきましょう。
中小企業から大企業へ転職する5つのメリット
中小企業から大企業への転職は、いくつか注意すべき点もあるものの、たくさんのメリットがあることも確かです。
たとえば、次のような点が挙げられるでしょう。
- 社会的信用・ネームバリュー
- 報酬・福利厚生がレベルアップ
- 部署移動で経験が詰める
- 同僚と切磋琢磨する環境
- 転職に有利
ここでそれぞれ見ていきましょう。
社会的信用・ネームバリュー
一番に挙げられるのが、ネームバリューがあり社会的な信用度が高いことでしょう。
ブランドとしての力が強く知名度があるため、取引先にどのような会社か説明したり信頼してもらうために実績を提示したりする必要がありません。
商談を有利に進められるなど、全般に仕事がしやすい傾向が強いです。
大企業に勤めていることで社員本人の社会的信頼度も高く、住宅ローンやクレジットカードの審査にも通りやすい、人付き合いの面でもプラスに作用するなどメリットがあります。
報酬・福利厚生がレベルアップ
厚労省の統計によると、大企業の月の平均賃金は男性38万3300円、女性27万円800円でした。
一方、中企業は男性31万8300円、女性24万1400円となっています。
この金額は6月分の賃金から時間外や深夜勤務、休日勤務、宿日直などの諸手当を引いたもので、賞与は含まれていません。
仮に4カ月の賞与が出たと仮定すると、大企業の男性社員の年収は約613万円、中企業は約509万円となり、約100万円もの差が生まれます。
このように、大企業は一般に給料が高めです。
また、法定外福利厚生が非常に充実しているところも多く見受けられます。
法定外福利厚生とは、企業が社員のために独自に設けられる制度のことで、社宅制度や住宅費の補助、ジムの費用負担などさまざまなものがあります。
中小企業の場合そこまで制度が整わず、あまり充実しているとはいえないところが多いです。
なかには法的に義務づけられた法定内福利厚生(社会保険料の負担など)のみといったところもあります。
部署移動で経験が詰める
大企業は細分化された狭い範囲の業務を担当しますが、数年ごとに異動するジョブローテーションがあります。
多くの部門で仕事の経験を積むことができ、そこから人脈を広げることも可能です。
ただし、会社の社風や考え方によっては、必ずしもジョブローテーションが行われないこともあります。
ジョブローテーションを行っていない企業に入社すると、狭い範囲の仕事を長年ずっと続けなければならないこともあるため、注意しましょう。
同僚と切磋琢磨する環境
大企業はとにかく社員の人数が多いです。
新卒入社の場合、同じスタートラインの者同士で競い合い切磋琢磨することができます。
中途採用の場合も、同僚が多いため業務について相談しやすいでしょう。
一方、中小企業の場合は新卒採用の人数が少なく、なかには毎年は採らず人手不足になったところで中途採用するところもあります。
そのため、同期入社の同僚がいない、入社したら自分以外は一回り以上年齢が離れているベテラン社員しかいなかったなどのケースも起こります。
転職に有利
大手企業への転職に成功したものの、思っていた環境ではなかったりさらなるキャリアアップを目指したりして、再度転職を考えることもあるでしょう。
中小企業から大企業に転職する際に重視されるのは個人のスキルや実績などで、前職が小さな企業であってもそれが枷となることはありません。
一方、大企業勤めというキャリアは一定の強みになります。
これは、大企業で働けるポテンシャルを持っている証明になるからです。
ただ、それでもやはりスキルや実績が重視されることに変わりはありません。
将来的に転職を考えているにせよいないにせよ、能動的に業務に取り組み、実績を上げることに注力することが大切です。
